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児童自立とWITHの心

協議会発行誌
「児童自立とWITHの心」

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「新しい社会的養育ビジョン」に対する意見

「新しい社会的養育ビジョン」に対する児童自立支援施設としての意見


平成29年8月に、「新しい社会的養育ビジョン」が、厚生労働省から発表されました。少し時間がかかりましたが、当協議会の意見として取りまとめ、平成30年2月に提出した文書を掲載いたします。

 ただ、協議は継続されると認識しておりますが、今後、当協議会としては社会的養育ビジョンにおける児童自立支援施設のあり方を明確にする必要があると考えております。ご意見、ご協力、よろしくお願いいたします。


全国児童自立支援施設協議会

会長  林  功三

平成30年2月27日

厚生労働省子ども家庭局

局長 吉田 学 様

全国児童自立支援施設協議会

会長  林  功三


「新しい社会的養育ビジョン」に関する意見


 日頃より、児童自立支援施設の運営並びに協議会の活動に御指導を賜り、厚くお礼申し上げます。  

児童自立支援施設は、児童福祉法第44条で「不良行為をなし、又はなすおそれのある児童及び家庭環境その他の環境上の理由により生活指導等を要する児童」を入所させ、生活の立て直し、育て直しをして、児童の自立を支援する施設で、家庭から措置される児童の他、児童養護施設や里親で不適応となった児童も多く措置されており、職員は四六時中きめ細かい支援を行い、児童の最善の利益のために努めております。

 平成28年に児童福祉法が改正され、児童が権利の主体であることが明確にされ、家庭養育優先の理念が規定されました。  これを踏まえて、先般、「新たな社会的養育の在り方に関する検討会」により、「新しい社会的養育ビジョン」(以下「ビジョン」)がまとめられました。  このビジョンでは、「社会的養育」として、支援の対象を、家庭で暮らす児童から代替養育を受けている児童まですべての児童であることを明確にし、その養育に関する国と地方公共団体の責任が提言されたことは高く評価されるところです。

 一方で、施設の設置目的、機能等が異なっている児童養護施設、児童心理治療施設、児童自立支援施設について、一律の小規模化、地域分散化や滞在期間の短縮などが示されました。

 今後、ビジョンの内容に沿った施策を一律に推進した場合、現場に大きな混乱が生じることとなります。本ビジョンの具体化に向けては、地方自治体や関係団体等の意見も踏まえ、関係者が十分に議論を行っていくことが児童の最善の利益につながるものと考えています。

 全国児童自立支援施設協議会としても、次のとおり意見をまとめましたので、よろしくお願いいたします。

1 児童自立支援施設の特徴

 ○ 施設の支援形態は夫婦小舎制が出発点となっており、伝統的に児童と大人との濃密な関わりを大切にしていま

   す。現在は、小舎を基本とし夫婦制と交代制との施設がありますが、この基本的な考え方に変わりはありませ

   ん。

 ○ 敷地内には児童が寝起きする生活寮の他、学校を併設し、基本的に敷地内で生活部門と教育部門が密接に連携

   し、一体となって児童をきめ細かく支援をするところに大きな特徴があります。

 ○ 入所児童の中には、家庭裁判所の審判を経て入所する児童もおり、司法上の役割も担っています。

 ○ 児童自立支援施設は、各都道府県に設置することが定められていますが、特に専門的な支援や行動制限を要す

   る

   対応が求められる児童のために2か所の国立施設が設置されています。

 ○ 規制緩和により社会福祉法人の運営も可能となりましたが、法人運営の施設は、全国58施設中、篤志家の先駆

   的な実践によって創設された民間施設2か所のみであり、新規の設立はありません。児童自立支援施設の入所

       期間は平均1.5年以内と比較的短く、入所児童数の変動が激しいことや、専門性の高い人材確保が不可欠であ

       り、民間では運営が難しい施設種別です。  


2 入所対象児童

 ○ 児童自立支援施設の入所対象者は、児童福祉法第44条で「不良行為をなし、又はなすおそれのある児童及び家

   庭環境その他の環境上の理由により生活指導等を要する児童」とされています。

 ○ 具体的には、非行を有する児童のほか、発達障害、児童虐待などに起因する愛着障害等により、親子関係の不

   調、対人関係の不調、学校不適応等に至り、生活の立て直し、育て直しが必要な児童を受け入れて支援してい

   ます。


3 要望事項

 ア 養育単位の小規模化について

   児童自立支援施設は、もともと夫婦小舎制から出発しており、現在も小舎を基本として支援をしています。個

   別的な支援は大切なことであり、更に推進すべきものですが、一方、児童自立支援施設の実践からは、仲間た

   ちと支え合い共に成長するための児童同士の育ち合いの場という側面も欠かせないと考えております。

   そのため、養育単位について一律の定めを設けるのではなく、施設種別の特徴を最大限に生かして、児童のケ

   アニーズに合わせた代替養育が行えるように、現場の意見を踏まえて慎重な判断をお願いします。


 イ 地域分散について

   児童自立支援施設は、児童の生活を立て直すために、一旦、限られた空間で生活部門と教育部門が一体となっ

   て支援するところに最大の特徴があります。したがって、地域分散とは相入れません。地域分散で生活できる

   状態になったとき、児童自立支援施設はその役割を終え、児童養育の場は家庭や児童養護施設等へと移ってい

   くこととなります。


 ウ 高機能化のための職員配置の充実について

   これまでも要望してきたところですが、児童自立支援施設での高機能化を図るためには、心理療法を担当する

   職員の充実と看護師の配置が必要です。これが実現できるよう、設置団体での人員配置の根拠を省令で規定し

   ていただくようにお願いいたします。

   また、児童自立支援施設においては、非行、発達障害、児童虐待などによる愛着障害等、さまざま特性を持っ

   た児童の入所が増大しています。これらの児童に個別のきめ細かい対応ができるようにするためには、寮職員

   の増配置が必要です。

   さらに、児童精神科による医療ケアを必要とする入所児童の割合も増えているので、通院の付添に伴う人員の

   増加、医療機関の円滑な調整、連携を図るためにも、医療的な専門職または医療的コーディネイトできる人材

   の配置が求められているところです。

   そのため、これらの職員についても省令に規定していただくようにお願いします。  


 エ 児童の十分なアセスメントについて

   子どもの権利が保障された一時保護を実現することに異論はありません。しかしビジョンで言及されているよ

   うな、アセスメント一時保護における里親への委託及び地域分散等については、施設入所後に適切な援助方針

   に基づいた支援ができるよう、主訴に応じた十分なアセスメントができる仕組みを構築することが必要です。


 オ 国立児童自立支援施設について

  「これからの国立児童自立支援施設のあり方に関する検討委員会」報告書に記載された事項の検討を進め、人

   材育成、モデル的な取組等、国立児童自立支援施設が行う地方の児童自立支援施設を支援する機能の強化を

   図っていただけますようお願いします。